おかしみ日記

おかしみは、スパイス。

東京仕事百貨から「東北」仕事百貨へ

中村健太さんのこんなツイートを見て、昨日、松戸にあるMAD City Galleryに出かけた。被災者の雇用をつくるような何かができないか? そのためのブレストがしたい。東京仕事百貨を運営している中村さんらしい提案だと思った。

東京仕事百貨とは? 知らない人のために簡単に説明する。ひとことで言えば、求人サイトだ。さまざまな仕事の募集が掲載されていて、応募したいと思えば誰でも応募できる求人サイト。リクルートのリクナビNEXTやエンジャパンなどと同じ、求人マッチングサービスの一種だ。では、それら大手企業の手がける求人サイトと東京仕事百貨は同じなのか、といったら、それはちがう。いや、まったくちがうのだ。

これはぼくの解釈だけれど、一般の求人サイトが「稼ぐ」ための仕事探しを行う場だとしたら、東京仕事百貨は「生きる」ための仕事探しができる場だ。自分らしく生きるための。ぜひ、東京仕事百貨に掲載されている求人情報を見てみてほしい。すぐに分かると思うから。そこには収入や勤務地でソートして選ぶような仕事は載っていない。そのかわりに、たとえば九州の離島で地域の人のために脳ミソに汗をかく月収10数万円の仕事が紹介されている。必要以上に仕事を「よく」見せたりはしない。その仕事の難しさや、覚悟がないとこの仕事は務まらないといったことが、募集の背景となるストーリーとともに丁寧に描かれる。掲載されるのは、そんな真っ当といえば至極真っ当な求人ばかりだ。掲載する企業も、応募する人も、自然とセグメントされていく。募集する側にも応募する側にもしっかりとした「想い」があって、それが伝わる採用活動だから、採用後の定着率もいいと聞く。こんな求人サイトは他にない。

冒頭で「中村さんらしい提案」と書いたが、東京仕事百貨を作った彼だからこそ、被災地での雇用について考えたいと思ったのだろう。ぼくはその想いにとても共感した。とはいえ、被災者の雇用だなんて、かなり大きなテーマだ。ブレストの途中、「机上の空論になってしまってはいけない」という指摘の声がしばしばあがった。被災者の雇用についてはすでにリクルートが「東日本大震災・被災者のための求人情報特集」という形で大々的な募集をかけている。似たような取り組みをしても意味がないし、もしかすると東京仕事百貨のトップページにリクナビNEXTへのリンクを掲示だけでも十分に意味のあることかもしれない。東京仕事百貨だからこそできる被災者の雇用って何だろう? 被災した現地できちんとお金がまわっていくようなそんな雇用の仕組みをどうやったら作れるのか? 中村さんの現状認識を共有してもらうことからブレストは始まった。

なかなか出口の見えないブレストだった。漁師なら「漁をする」という熟練したスキルがあれば、たとえばそのスキルを必要とする漁協が全国各地にあるだろう。そのマッチングを行う仕組みがあればいいのではないか。でも、漁師に限らないが、地元を離れることに抵抗感を抱く人も多いだろう。うまくマッチングできるだろうか。そういえばテレビで見たこんな話もある…。真剣な話が続くものの、やはりどこか机上の空論になっているように感じられた。でも、それも途中までだった。

問題は、被災した現地の人たちの「仕事」のニーズが分からないことだった。ということは、そのニーズがつかめて、それを「仕事」に落とし込み、被災者の中からできる人を募れば、仕事をつくることができるのではないか? そうであれば、まずそのニーズをつかむことそれ自体を仕事にしたらいいんじゃないか? 
ブレストがブレークスルーした瞬間だった。
たとえば現地の仕事のニーズを探る取材ライターを募ることだ。現地の詳細な声が聞けたら、「え、こんなことが仕事になるの?」というようなことにも賃金を払う形で雇用を発生させられるかもしれない。そうした仕事の見立てとマッチングの仕立てができれば、被災者の雇用を実現させられるのではないか。取材が起点になっているという意味では、東京仕事百貨の仕事にとても近い。名づけて「東北仕事百貨」だ。

でも、雇用といってもその雇い主は誰で、給与は誰が支払うのか。それには、まず東京仕事百貨が取材ライターを募集して報酬を払う形になるだろう。ただし、東京仕事百貨にたくさんのライターを雇えるだけの余裕があるわけではない。そこはもしかすると、寄付という形でお金を募ることになるのかもしれない。これはぼくの妄想だが、「この方にこんな仕事をしてもらうために給与を支払いたいので、寄付をお願いします!」と言われたら、ぼくは喜んで寄付をすると思う。自分の寄付金がどんな形で、誰の役に立っているのかが、はっきりと見えるわけだから。寄付をするモチベーションはすごく高まる。

ブレスト終了後、中村さんがこんなふうにツイートしている。

もしあなたが、「自分なら被災者の雇用についてこんな風に考える。こんなアイデアがある。こんなことなら手伝える」ということがあったら、ぜひ手を貸してほしいと思う。中村さんに直接、コンタクトをとってもらってかまわない(中村さんのツイッターIDは@nknta)。たとえば、ぼくなら求人制作の経験があり、そのときの同僚の中には東北出身者もいるから、彼らと一緒にボランティアで取材ライターをやることだってできるだろう。
中村さんの今後の取り組みを応援していきたい。あなたもぜひ応援を。よろしくお願いします。