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おかしみ日記

おかしみは、スパイス。

国家に棄てられる民、国家を棄てる民

先日の日曜日(7月3日)に、「接続の政治学」というワークショップ(講演会)に行ってきた。場所は大妻女子大学の千代田キャンパス。講演者の一人に、大学時代にお世話になった先輩が含まれていたからだ。もう10年ぶりだろうか。「鈴木くんは昔と変わらないねえ」と先輩が言うので「早尾さんも変わりませんよ」と返す。すると「いやぁ白髪が増えてさぁ。アハハ」と早尾さんは大きな声で笑った。3月の大地震が起きたとき、早尾さんは仙台にいた。幸い、家族も家も無事だったが、福島第一原発が爆発したことをラジオで知り、即座に行動を起こした。子どもを内部被爆の危険にさらすのは避けたい。仙台を脱出し、7歳になるお子さんを京都に疎開させたのである。その顛末については『現代思想』に掲載された早尾さんの文章に詳しい。

コントロールを失って放射能をまき散らしている原発に対峙したところで、生命を危険にさらすだけだ。小さな子どもであればなおさら致命的である。極限まで避難させないようにと政府・東電が「安全です」と繰り返すのをそのまま信じるのではなく、自分の判断で退避するしかないし、放射能の排出がその量と期間においてチェルノブイリ事故をはるかに上回っている以上、福島・宮城にとどまらず、三〇〇キロ内の首都圏からの避難を判断することも十分に考えなくてはならない。無責任な東電・政府に「なんとかしてくれと」求めていたら手遅れになる。責任追及は後で必ずするとして、まずは自分で決断し、避難を敢行するしかない。


早尾さんは今春から東京にある大学に勤める一方で、週末には仙台または京都に出かけるという生活を続けているそうだ。できれば遠くに避難したい、子どもだけでも避難させたい。そう考える、小さいお子さんを持つ親が被災地にはたくさんいる。早尾さんは自らの経験を活かし、そうした人たちの相談にのり、具体的な避難手段を提案し、それを実行に移す手伝いを続けている。「自分もそうだが、昔から東北人は我慢強いと言われてきた。お上にモノ申さず、従うのが東北人気質。しかし、今回の原発をきっかけに、政府不信の意志表示をする人が増えている。『このままでは政府に殺されてしまう』と」。

今すぐには外には出られない、でも、ここにとどまることが正しいことだとは、到底、思えない。原発から距離の近い場所に住む、かなりの被災者がそう考えているだろう。(同日夜に放送されたNHKスペシャルでも、福島市の主婦の方が涙ながらにまさにそのようなことを語っていた。)早尾さんは、自主避難の可否について冷静に考えるためにも、いったん、被災地を離れてみてはどうかと提案している。そして子どもたちが夏休みに入るタイミングが、「外」に出るには格好の時期ではないかと勧めている。たとえば、子どもを連れて福島を離れ、関西あたりまで行き数週間を過ごしてみる。思い切り空気を吸い込み、外を走り回ったとき、改めて気がつくのではないか、「どれほど異常な空間で自分たちは暮らしているのか」と。

僕(ら)にも何かお手伝いできることはありませんか、と早尾さんに聞いてみた。すると、カンパをお願いしたいという返事が返ってきた。夏休みの間、福島から京都へ移動しキャンプを行う計画があるのだという。目標金額は50万円ほど。20〜30人ほどを福島から京都へ。その移動の際の交通費に主に使われるそうだ。入金方法などの詳しい案内は早尾さんのブログを見ていただきたい。

誰の役に立つのかが具体的にハッキリと見える募金をしたい、と僕はかねてから思っていたのだけれど、このカンパはまさにそれだ。少しでもお役に立てればと思う。


現代思想2011年5月号 特集=東日本大震災 危機を生きる思想

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インパクション 180 特集:震災を克服し原発に抗う

インパクション 180 特集:震災を克服し原発に抗う

インパクション所収の早尾さんの文章より引用します)「沖縄の基地問題は、アメリカと日本の二重の植民地主義の問題でもある。日本がアメリカから独立しえていないという問題、さらに日本国内で沖縄が内国植民地にされているという問題。基地問題と原発問題は構造的に同じだということはつとに指摘されている。危険なものが遠くの見えない場所に押しつけられるという差別、そしてそこに従事せざるをえない労働者もまた差別されている。明らかに「中心」と「周辺」という構図なしには、基地も原発も成り立ちえない。/いま福島の被爆問題に取り組むということは、この植民地主義と差別の問題を克服するということである、そうでなくてはならないと、福島に生まれ育った者として、強く思う。」