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おかしみ日記

おかしみは、スパイス。

対談なのに、泣きたくなった。

●NHKの番組『プロフェッショナル』の司会でもおなじみの脳科学者、茂木健一郎さんの対談を集めた本が『芸術脳』(新潮文庫)だ。文庫化されたのを機に買って読み進めているのだが、頭から2番目の内藤礼さんとの対談で、もはや泣きたいくらい感動してしまった。

内藤礼さんは現代美術の作家さんだ。一度、鎌倉で内藤さんの展覧会を見たことがあるけれど、この対談を読み、彼女の放つ言葉に初めて触れて、なるほど、こういうことを考えている人がああいう作品を作るのか、と何て言うか、腑に落ちた。(作品を見たことがない人には何がなんだかサッパリ…という説明ですみません)

●美とは何か? 生とは何か? 対談のはしばしでハッとさせられる言葉に出会えた。たとえば、ぼくはこんなくだりが大好きだ。

内藤 いちばん厳しい状況にあっても美しいものを感じるというのは不思議なことだと思う。以前「なにもいえないときも、ただ美しいといえた」という一文を書いたことがあるんだけど、ずっと思っていることなんですよ。美しいというのは、もちろんただ単に色がきれいとか形が美しいということじゃなくて、いちばん美しいものは人間の心の中にあると思うから、美術っていうのは、ではなんだろうということになるのかもしれない。人の心の中の美しいものを見つける仕事とか生活ができたらいいんだけど。

そして、こんなくだりも。

内藤 人の心の中にある美しいものは、見ることも触ることもできない。記録することも留めることもできない、つまり保存できない。すごく瞬間的なものだったり、心の中の美しいものを見つけたその人が死んでしまえば、本当にあったのかどうかもわからないはかないものですよね。本当に美しいものとはそういうものだって気がする。

●この対談を読んでいる間中、頭の中では、自分が美しいと思う音楽が流れていた。それは坂本龍一のピアノ曲だった。彼のつくる音楽をぼくは美しいと思う。なぜ、そう思うのだろう。そう考えながら、この対談をもう一度、頭から読み返してみた。何度でも、折りに触れて、読み直してみたい対談だと思った。

芸術脳 (新潮文庫)

芸術脳 (新潮文庫)